賃貸アパートやマンションの地盤を確認する方法

賃貸アパートやマンションの地盤を確認する方法

最近、南海トラフ地震の前兆かもしれない動きがあるという報道も一部なされていて、次の大地震がいつ来るかわからない不安を感じている人も多いと思います。

しかし、地震を不安に思うことは日本に住んでいる以上は避けられないことであり、逆に「なんとなく大丈夫さ」と何も対策をせずにぼんやりしているよりも、よほどいいことだと思います。

地震に強い、地盤の強いところに住みたいという人は多いですが、さて、地盤の良さとはどういうことで、何をチェックしたらいいのでしょう?

基本のき、地盤ってなに?

地盤とは、はっきりした定義があるわけではないのですが、一般的には地球の表面の部分を言います。現在私たちの足の真下、地球の表面の部分は土だったり岩だったり、いろいろな構成要素がありますが、「良い地盤」「悪い地盤」とはどういうことなのでしょうか?

地盤は減災に大事なの?

地震が起きた場所に行ってみると、ほんの数メートルの違いで建物がほぼ崩壊しているような場所と、そのままの姿で残っている場所が隣り合っているような光景を目にします。また、「あの辺は地盤が固いから安心だ」なんていうこともよく聞きますよね。

確かに基本的には軟弱地盤は地震の揺れの被害を大きくします。だから強固な地盤の上に住むことはとても大切だという専門家はいます。しかし、その一方で巨大なエネルギーが放出される超大型の震災が起きた場合、地盤ごと傾くので、多少の地盤の固さは関係ありません。

それよりも、地震があった時に命を守ってくれるような建物、脱出経路があるようなその上の建造物、町作りのほうが減災には重要だという専門家もいます。

私たち素人にはどちらが正しいのかわかりませんから、地盤も建物も町作りも、全て鑑みて総合的に安全そうな場所を探して住むことしかできないのではないでしょうか。

それに、町や建物作りのほうが重要だと言っている専門家も、あくまでも「そちらのほうが重要だ」と比較して言っているだけで、地盤の良し悪しが減災に直結することを否定するものではありません。

マグニチュードと地盤

地震の大きさと言うと、最初に思い浮かぶのがマグニチュードと震度だと思います。この二つの違いがよくわからないという人も多いのですが、マグニチュードとは簡単に言えば、起きた地震が発するエネルギーの大きさを表す指標です。

大事なのは、このエネルギーは揺れの大きさを表す震度とは違うということです。どれだけマグニチュードの大きな地震でも、人が住んでいる場所から遠かったり発生場所が深ければ人間が感じる震度は大きくなりません。

当然地盤が緩ければ、そこは震度が大きくなります。つまり、同じマグニチュードの地震が一帯で起きたとしても、震度は地盤によって変わるということです。その差は生死の境になるかもしれません。

関東大震災を例にとると、武蔵野台地の東側の端にあり、比較的固い関東ローム層の上に人が住んでいる山の手と、河川の土砂が堆積したやわらかい沖積層である城東地区、下町と言われるあたりでは被害の様相はまったく違いました。

軟弱地盤で起きること

揺れが大きくなるために建物の倒壊などが起きるのもそうですが、液状化現象も問題です。液状化現象が起きるとすぐに住めなくなるわけではありませんが、建物には大きなダメージがあります。

具体的には建物が傾き、脆弱になるほか、ドアや窓があかなくなったという報告もたくさんあります。また、普段は意識しないような傾きでも、傾いたところで生活をすることは大きなストレスとなるだけでなく、そこで暮らす人の平衡感覚をじわじわと蝕み、めまいや頭痛、不眠が引き起こされたりして日常生活に甚大な影響を及ぼす健康被害がでるかもしれません。

そんな液状化ですが、防災科学技術研究所によれば、埋立地や河川敷、砂洲、堆積した自然堤防など、砂と水が多い地域が危ないとされています。東日本大震災の時は浦安エリアの液状化問題がクローズアップされました。

ただ、ここで注目すべきなのが、広範囲で液状化が起きた浦安の中でも、東京ディズニーリゾートは、一部駐車場部分を除いて、ほぼ被害は出なかったということです。その違いはどこから来たのでしょう?

地盤の歴史を知ろう

活断層の位置など、現在の技術ではなかなか正確にはわからないこともありますが、自分が住もうとしている場所の地盤がどういう状況になっているのか、過去に何があったのかを知ることはできます。

東京ディズニーリゾートが無事だった理由

先ほど言った、東日本大震災で広範囲に液状化問題が発生した浦安にあるのに、ほぼ無傷だった東京ディズニーリゾートは、報道によれば、建物を建てる前の地盤作りの段階がしっかりしていたのだそうです。

約14万坪という広大な敷地ですが、土木会社がコンクリートの廃材をリサイクルして作った再生砕石を利用した工法をとったから液状化の被害を免れたのだと言われています。つまり、本来は弱いはずの地盤でも、きちんとした基礎工事が行われていれば災害被害を減らすことができるという一つの例になったということです。

地盤の歴史をネットで知る方法

過去、自分の住もうとする場所の地盤はどういう状況で、どんな工事が行われたのかを探すホームページはインターネット上に多数公開されています。

たとえば「GEODAS(ジオダス)」もその一つです。これは、地盤や地質の調査や改良工事などを請け負っているジオテック株式会社が運営しているサイトで、住所をクリックすると全国どこでも地盤の歴史を知ることができます。

地図上には、

  • 地盤調査を行なった結果「軟弱地盤」と診断された場所
  • 地盤が軟弱なため「地盤補強工事」をした場所
  • 「腐植土」※が確認された場所
  • ボーリング調査のデータがある場所

それぞれを見ることができるので、自分の住みたい場所をピンポイントで見ることができるでしょう。ただし、この地図は過去に調査や工事がされたところだけであり、また軟弱地盤と良好地盤の判断基準もはっきりとした統一基準があるわけではないので、これだけで大丈夫とか危ないと判断することは危険かと思いますが、参考にはなると思います。

※参照URL: GEODAS

※「腐植土」とは植物の繊維などが多く含まれる、隙間の多いスカスカの土です。軟弱な上に地盤沈下の恐れもあります。

古地図を見てみる

GEODASは過去に調査が頻繁に行われている都心部では細かい資料はありますが、郊外や地方にはあまり資料はないかもしれません。そんな時、他にもヒントになることはあります。

地名

これは有名な話ですが、「泉」や「サンズイ」など、水関係の名前がついた場所や「梅」=「埋め」、「蛇」などがつくところは地盤が弱いと言われます。ただ、最近では不動産会社が買い取って一括して悪いイメージの地名を変えているところがあるので、ちょっと古い地図を見てみてもいいでしょう。

古地図

その他にもチェックしたいのが古い水路です。江戸時代の日本の土木技術は素晴らしく、都市には水路が張り巡らされていましたが、これが都市開発によって蓋をされ、暗渠になっていたりします。その部分は当然脆弱であることが予想できるので、古地図を見て何があったかを知るのも大事です。

地震の被害を減らすのは「当たるも八卦当たらぬも八卦」のような占いではありません。きちんとした調査を見て、納得のできる場所を探して住む、それが地震国である日本で暮らす私たちの自己責任なのだと思います。