敷金返還の専門家である敷金診断士や敷金鑑定士について

賃貸契約の際のトラブルの多くが敷金返還に関することです。退去の際に預けた敷金から過大な修繕費用を差し引かれ、手元に戻ってくるのはほんのわずかということでトラブルになります。

最初に敷金を預けているため大家に主導権を握られがちですが、交渉次第で多く取り戻せるケースがあります。そのお手伝いをしてくれるのが敷金診断士や敷金鑑定士と呼ばれる存在です。

退去時の原状回復費用は適正?誰に相談したら良いの?

原状回復費用とは、借りていた部屋を退去するときに、入居時と同じ状態にして部屋を返すために必要な箇所を修繕するための費用です。不注意で壊してしまった設備や、傷をつけたり穴をあけたりした床や壁などを修理するために使われるもので、引っ越しをしてから内装工事やルームクリーニングの業者が入り作業をします。

その原状回復費用に関して、貸主と借主の費用負担の線引き、どこまで修繕するべきかなどが明確でないことがトラブルが頻発する原因です。

賃貸契約トラブルは敷金返還に関することが一番多い

中には畳や壁紙の交換、フローリングの張り替えなども入居者に全額負担を求めるケースがあり、預けた敷金では足りないほどの高額の費用になってしまいます。しかし、普通に生活する以上どうしても避けられない細かな傷や汚れなどは、入居者には修繕義務を負わないとされている国土交通省の公示するガイドラインがあります。

昔から敷金返還に関するトラブル事例や相談例が国民生活センターに数多く寄せられていました。そのため、国土交通省では賃貸における原状回復に関するガイドラインでそれまでの裁判事例を取り上げて一定の指針を示しています。しかし、一般的にはあまり知られていないため、未だにトラブルは続いています。

そのため、国会で120年ぶりの民法の大改正で、敷金返還に関する法律が明文化されました。ただし、一般に浸透し法律が守られるようになるのもしばらく先になる見込みで、罰則などが不明瞭なため楽観的に考えない消費者は多いようです。

入居者の味方、敷金診断士や敷金鑑定士とは?

そんな敷金返還トラブルになったときに、力を貸してくれるのが敷金診断士や敷金鑑定士と呼ばれる人たちです。敷金診断士や敷金鑑定士というのは、賃貸物件の敷金返還の際に起きるトラブルなどの相談窓口となり、原状回復費用を公平な目で査定してくれる専門家です。

両者とも、民間の試験を受けて授与される資格所持者です。敷金診断士は、NPO法人日本住宅性能検査協会が実施する年2回行う試験に合格すると、合格証書が発行され敷金診断士と認められます。

敷金鑑定士は、日本敷金鑑定士協会が実施する試験に合格すると合格証書が授与され敷金鑑定士と名乗り起業できます。敷金鑑定士という名称は国に商標登録として届けて認められています。

法律家とは違うの?どこまでお願いできるの?

敷金返還のトラブルは、両者間で話がこじれると裁判になるケースもあります。その際は、弁護士の資格を持たない敷金診断士や敷金鑑定士は、法律に関わる業務で報酬を得ることは非弁行為となります。つまり、裁判の資料となる書類を作成することはできても、裁判に直接的に関わって報酬をもらうことは禁止されている、という意味です。

専門家に相談すると敷金が多く戻るのは本当?

敷金診断士や敷金鑑定士が、交渉や適切な診断書を提示することにより、敷金が多く返還されるケースが増えてきました。そのため、ワイドショーなどに取り上げられ、社会的認知度も高くなっているようです。

専門家を頼った方が良いケースは?

喫煙者が室内でタバコを吸うと壁紙や天井がヤニで染まってしまいます。変色だけではなく、壁紙の奥の壁材にまで臭いが染み込み消臭費用も加わると高額の修繕費が請求されるケースもあります。適切な施工方法や金額か判断してもらうためにも、専門家に立ち会ってもらうと良いでしょう。

ペットを飼っていた人も、修繕費用が多くかかることが予想されます。内緒で飼っていたなら、高い修繕費を請求されても自分に落ち度があるため仕方なくそのまま支払う人も多いようです。ペット可の物件では、修繕費が高額になることを見越してあらかじめ敷金を家賃の3か月分程度に設定することが多いです。

しかし、そのペットが小型犬か大型犬か、猫なのか、一匹か五匹なのかなど種類や頭数によっても部屋の傷み具合や獣臭の状態に差があります。部屋はきれいに使っていたのに高額な修繕費がかかるのが納得いかないというときも、立ち会ってもらうと良いかもしれません。

高い設備を壊してしまって退去まで言い出せずにいた、自分の使いやすいように部屋を改装してしまった、などという場合も要注意です。自分に落ち度があるときに、どう責められて高い修繕費を吹っ掛けられるか心配だという人にもおすすめです。

住んでいるときに大家や不動産会社に対してあまり良い感情を持てなかった人も、念のため立ち会ってもらうと良いかもしれません。

退去の立ち会い時に一緒に立ち会ってもらう

敷金診断士や敷金鑑定士に退去の立ち会い確認の際に同席してもらうことは、ある種の牽制の意味があります。とはいっても、高い修繕費を吹っ掛けられるに違いない、と初めから喧嘩腰で対峙するのではなく、両者で穏やかな話し合いにより解決できることがベストです。あくまでも公正な目で適正な金額で査定してもらうことが目的です。

請求書を受け取ってから相談する

預けた敷金が少額だし、狭い部屋だから高額請求されることはないだろう、という人は、敷金診断士や敷金鑑定士に費用を払ってまで立ち会いを依頼するのがためらわれるかもしれません。

そんな時は、実際に請求された金額次第で相談をしてもよいでしょう。しかし、報酬はどの程度かかるのかを事前に確認しないと、実際の敷金の返還額よりも支払う報酬が高いようでは意味がなくなります。あらかじめ料金体系を把握しておく必要があるでしょう。

士業を名乗り悪質なやり方をするケースもあるため注意

 

敷金診断士や敷金鑑定士と名乗っていても、全員が同じような経験や知識があることにはなりません。受験資格に制限がないので、過去に賃貸や不動産関係の職に携わっていなくても、テキストに沿った演習問題を学習すれば合格することができます。

当然いろいろな人がいて、中には悪質なやり方をして逮捕されたケースもあります。依頼するときには十分に気を付けましょう。

弁護士が兼ねている場合も

正式な弁護士が敷金診断士や敷金鑑定士の資格試験を受けて業務をしている場合もあり、その場合は当然裁判になった時には心強い味方になります。そういう人は肩書きに弁護士という文字が名刺にきちんと記載されているはずです。疑わしいと思うなら、日本弁護士連合会のホームページで名前や登録番号から確認するか、弁護士バッジを見せてもらいましょう。

※参照URL:
日本弁護士連合会
https://www.nichibenren.or.jp/

肝心の費用は?

あらかじめ報酬をどのように支払うことになっているのかを必ず確認しておきましょう。
成功報酬なのか、敷金に対しての何%と規定があるのか、立会ってもらう際にいくら必要なのか、裁判になったときは、など細かく聞いておきましょう。

でないと、敷金が多く戻ったにしてもそのほとんどを報酬に支払うのでは元も子もありません。まして、敷金を取り戻すことが失敗に終わっても、立ち会い時の手数料を支払うことにもなりかねません。

報酬の一例では、預けた敷金が15万円未満だと、東京の立ち会い料金が20,000円程度、大阪だと13,000円程度と、地域の敷金の慣例によるものか都市別に料金設定をしている例が見られました。

また、借主とともに確認をする2者立ち会いだと21,600円、それに加えて管理会社や大家との3者間の立ち会いだと32,400円などと、ケース別に料金形態を変えているところもあります。不当請求されたので、抗議文を作ってほしい、などの依頼に対する書面作成費用は数千円でできるところが多いようです。

まとめ

敷金診断士や敷金鑑定士は、敷金に関するトラブルに対して、公平な立場で円満に解決を図ってくれる頼りになる存在です。しかし、無料のボランティアではありません。依頼するときには、必ず料金を確認してください。

まずは、国土交通省のガイドラインなどを頼りに、自力で解決する努力をしましょう。事前に知識をつけておけば、やすやすと言いなりになることもないでしょう。

また、国民生活センターや地域の消費生活センター、弁護士無料相談会などの無料相談機関も利用すると良いでしょう。同じような相談事例は山とあるので、解決の糸口が見つかるかもしれません。

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