敷金精算で納得いかない場合は少額訴訟も検討しよう

賃貸で部屋を借りた場合、「立つ鳥跡を濁さず」ではないですが、できれば何の問題もなく笑顔で大家さんや世話になった不動産屋さんに挨拶をして、鍵を返してお別れしたいものです。

実際にそうやって何の問題もなくお別れしたと自分の中では思っていたのに、後日返ってくると思っていた敷金がまったく返ってこなかった、あるいはそれどころか追加の請求書が来たとしたらどうしますか?

その最終手段が少額訴訟です。

敷金返還トラブルとは

不動産賃貸で多く発生するのが、敷金返還のトラブルです。自分ではきれいに住んでいたと思うし、退去前の掃除もできる限りはやった。部屋のものを壊したこともカビさせたりしたこともない、それなのに敷金が返ってこないなんてことはありえるのでしょうか?

敷金が返ってこないとはどういうことか

結論から言えば、ありえます。というのも、昔は賃貸に出る部屋の数も少なく、また実家を離れて賃貸住宅に住むという人も今ほど多くありませんでした。

つまり、どちらかと言えば貸し手市場だったわけです。大家さん側は部屋を貸すというビジネスをしているのに対して、借りるほうはずぶの素人なわけですから、「これは払うものなんです」と強い口調で言われると「そういうものなのか」と泣き寝入りしてしまったことも多いことでしょう。

特に女性の一人暮らしで、不動産業者にちょっと怖い感じの口調で言われたら「それはおかしい」とは言いづらかったのですよね。

こちらは部屋をある時期だけ借りて、その後はおそらく二度とかかわることはない一過性のビジネスなのに対して、大家さんは今後も仲介や管理なども委託してくれるいいお客さんなのですから、不動産業者がどちらの側につくのかは明らかです。

最近はトラブルは減っている

そのようなトラブルで、理不尽だと思いながらも返ってこない敷金に泣き寝入りした人も多かったのですが、ここ最近、実は敷金返還トラブルは減っています。

それは、インターネットの普及により敷金返還訴訟などがあちこちで報じられるようになって「敷金は本来返ってくるものだ」という意識が広まったことと、部屋あまり状態になり、あまりあくどいことをすると大家さん側としてもその後の商売が成り立たなくなる可能性が出てきたからです。

とは言え、いまだに国民生活センターに寄せられる相談だけでも年間で10,000件と敷金返還にまつわるトラブルは多いので、損しないために一番必要なこと、自衛をしましょう。

敷金は返ってきて当たり前

本来敷金とは、家賃の滞納があったり部屋の壁に穴をあけるなど、取り返しのつかないようなダメージを自分の過失で与えてしまった時の修繕に使われるためのお金であって、次に入る人のためにきれいにしてあげるためのお金ではありません。それは部屋の持ち主である大家さんが負担すべきものです。

この大前提を知らないがために泣き寝入りをしていた人が過去には多かったわけですが、さらに借り手に対して追い風になっているのが、民法改正です。120年ぶりの大改正で敷金は原則返すこと、という当たり前の義務ができました。

こんな敷金は返してもらおう

国土交通省は敷金返還にまつわるトラブルが多いため、ガイドラインを公表していて、それには「通常の使用による損耗は原状回復の必要なし」とはっきりと書かれています。つまり、原状とは部屋を借りる前の状態で、敷金はすっかりそれに戻すために使われるものではないと国土交通省は言っているわけです。

つまり、普通に暮らしていてもその上で立ったり座ったりした際にできる畳のささくれや壁紙の黄ばみなどは、大家さん側の責任で直すものです。もしそういう費用が請求されていたら、それは払う義務はないということができます。

ガイドラインはガイドライン

とは言え、実はこのガイドラインはあくまでもガイドラインであって「こうしなければいけませんよ」「違反したら罰則がありますよ」という法律とは性質が違うものです。あくまでもトラブルが起きるのを未然に防ぐためなのです。

だからもしかしたらあなたが「ガイドラインに基づいてこれは自分には支払い義務がないものだ」と言っても、「ガイドラインはガイドラインだから遵守する必要はない、うちはずっとこうやってやってきている」と不動産業者に突っぱねられることも十分考えられます。

でも、そこでひいてはいけません。このガイドラインがどうやってできたかと言うと、過去のトラブルや裁判の判例から導き出されたものなので、いざ裁判になった場合、利はこちらにあります。

ということで、「こちらには払う義務はない。それでも払えと言うなら裁判は辞さない」という態度をまず相手に見せましょう。「そこまで勉強しているのなら」とこの段階で折れてくる可能性は結構高いです。

実際に少額訴訟に踏み切る

それでも相手が払えと強硬に主張してきたら、本当に訴訟するか、あきらめて言いなりに払うか、とるべき道は二つに一つです。以前は裁判と言うと、費用もかかりそうだし弁護士を頼んだりいろいろ手続きが難しそうだし、と普通の人は腰が引けてしまい、ここで泣き寝入りすることが多かったのですが、そんな人のためにできたのが少額訴訟という手段です。

実際に少額訴訟に踏み切るかどうかは別として、この手段を知っていて本当にやる気があると見せるのは、絶大な効果があります。

少額訴訟って何?

一般の訴訟は弁護士費用の問題などで敷居が高く、また「裁判沙汰」と言われるように心理的なハードルもあります。

そこでできたのが、少額訴訟制度です。600,000円までの金銭の支払いを求めることができる少額訴訟は、弁護士の必要もなく、原則一日の審理しかないので、時間的な負担や手間もありません。

少額訴訟の起こし方

少額訴訟は原告側がそのことを希望し、相手方がそれに対して異議をとなえなかった場合、審理が進められることになります。

基本審理は一日だけなので、その日までに自分の言い分を準備し、必要な書類などはそろえて提出することになります。ちなみに必要な書類は、訴状と賃貸契約か更新をした際の契約書(こういう時のために大切に保管しておきます)、それに原状回復のための見積書か請求書です。写真があれば、なおよしです。これらをそろえて管轄の簡易裁判所に提出しましょう。

敷金返還請求用のテンプレを使おう

それでも面倒くさいという人は、裁判所のHPに、かなり丁寧に書き方を解説した敷金返還請求用のテンプレートがあります。かなり丁寧に解説してあるので、その通りに書いていけば立派な少額訴訟の訴状の出来上がりです。

参照:裁判所HPの敷金返還請求訴状記載例

口頭弁論

テレビの法廷ドラマとは違って普通は丸いテーブルで話し合います。重要なのは、絶対に遅刻せずに行くことです。もし行けない場合、相手の主張がそのまま通ってしまうかもしれません。

費用は?

肝心の費用ですが、まずは印紙代。これは請求額が100,000円までなら1,000円。以下、100,000円増えるごとに1,000円ずつアップして、最高の600,000円で6,000円です。

さらに、それにプラスしてさまざまな書類の郵送のための切手代が必要です。これはかかわる人数にもよりますが、だいたい3,000円~5,000円程度と、こちらも大したお金ではありません。その他細かい当事者費用などがかかったとしても、敷金返還請求ならできることは全部自分でやれば10,000円以下でできるでしょう。

何万、時には何十万というお金を取り返すためなら安いものだと思います。

実際に裁判にならなくても

詳しく少額訴訟のやり方について書いてきましたが、実際に少額訴訟をやらなくても、やる気を見せるだけで解決することは多いです。

まず、相手方に「これこれこういう理由で納得できないので少額訴訟を起こします」と内容証明郵便を事前に送ります。まず、この段階で一度様子を見ましょう。こちらが本気だということがわかったら、相手方も折れるかもしれません。

もし折れなかったら、その内容証明郵便も裁判所に一緒に提出します。ことの経緯の説明をわかりやすくするためです。内容証明郵便は郵便局の窓口で送ることができます。

また、訴訟になったとしても和解ということもあります。本当に理不尽だと思ったら、裁判をしてでも自分は折れない、という強い姿勢を示すことで泣き寝入りを防ぐことができるので、がんばってください。

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