和室は畳の張替えがあるので退去費用が高くなる

和室は畳の張替えがあるので退去費用が高くなる

最近の賃貸住宅はフローリングやクッションフロアと呼ばれるビニール素材のところが大部分だと思いますが、今でも築年数が古い物件は和室で畳というところもあります。また、新しくてもデザイン的な理由でやっぱり畳がいいというオーナーの希望があったところもあるでしょう。

そんな畳の部屋ですが、出るときに敷金から畳の交換のためにお金を引かれるから損だと思っている人が多いようです。果たして本当にそうなのでしょうか?

畳の部屋のメリットとは?

昔は日本の家は畳の和室があるのが当たり前だったし、公団住宅でも必ず和室が一つはあるものでしたが、ライフスタイルの変化につれて、和室は必要ないという人が増えています。実際に和室は人気がなく、賃貸物件を持っているオーナーも和室をフローリングにリフォームする人が続出しました。

そんな和室の不人気の理由の一つが、「和室より洋室のほうがかっこいい」ということのほかに「畳は面倒だし、引越すときにお金がかかりそう」というものでした。しかし、畳の部屋にはメリットがたくさんあります。

畳は非常に優れた天然素材

畳の表面、畳表は天然素材であるイグサが用いられている場合がほとんどです。イグサは湿度が高い時は湿気を吸い込み、湿度が低い時は湿気を放出してくれます。またハウスシック症候群の原因物質などを吸着する空気の清浄作用もあると言われていますし、何より新しい青畳の匂い、嫌いな人はいないのではないでしょうか。

保温性や防音性にたいへん優れているのも畳の特長です。たとえば下がフローリングだと、床にちょっと固いものを落とすとそれが軽くても音が大きく下に響いてしまいます。子どもがいたり、よく物を落としてしまうという人は、畳の部屋のおかげで周囲に迷惑がかからなくなるかもしれません。

さらにもう一つ、今はベッドが当たり前ですが、畳に布団という昔ながらの日本の生活も見直されているようです。

畳をきれいに使うために

いくら自然損耗は原状回復の必要なしと言っても、明らかに過失で畳を傷つけてしまった場合には全額ではなくても多少のお金は請求されるかもしれません。なるべくきれいに使いましょう。

基本的に、畳の上に置いた家具によるへこみは大家さん負担ですが、普通の使い方ではつかないような傷をつけてしまったら、それは借主側の負担になることがあります。

そうならないためにも、以下の点に注意しておきましょう。

ものを引きずらない

もし畳の上で家具を無理に引っ張ってひっかけて畳表にかぎ裂きを作ってしまったり、畳の上にキャスターつきの椅子を置いてたたみの一部をひどくへこませてしまったり、畳表を傷つけた場合は、原状回復の費用を請求されると思います。

畳の上で家具などを引きずらないことはもちろんですが、なるべく畳の部屋でキャスター付きの椅子を使わないのがベストです。また、普通のダイニングチェアでも座るときや立つときに畳の上を引きずらないようにします。

どうしてもキャスターつきの椅子を使いたい場合は、下にボードをかませてカーペットのようなものを椅子の部分だけ敷けば傷が付くのを軽減できます。特に体重がある人は退去の際にもめないために万全の対策をしておきましょう。

タバコの焼け焦げに要注意

タバコを吸っていてうっかり落として焼け焦げを作ってしまったら、これは明確に借主側が払わなければいけません。

ただし、その場合でも「畳一畳だけ替えたらそこだけ色が違って変だから、色合わせのために全部替える費用を負担しろ」と言われたら、これは断ってかまいません。焦げのある畳の枚数分だけの負担で大丈夫というのが日本敷金鑑定士協会の見解です。

水分厳禁

基本的に畳は水分厳禁です。今はポリプロピレンなどの科学素材をいぐさのように編んでいくタイプの畳があり、このらタイプは水分に強いのですが、普通のいぐさの畳であれば水は一番の大敵と言っていいでしょう。

もし畳の上に水分をこぼしてしまったら、できるだけ速やかに拭き取り乾かします。最近の安価で軽いポリエチレンフォームなのであれば、軽いので乾きやすいです。ただ、昔の造りで昔ながらのわらの心材になっている場合はやっかいです。

乾きにくく、そのままだとカビてくる恐れ、さらに最悪のケースでは畳の下の床材にしみ込んで床材を傷める恐れがあります。そうなると、退去時に請求される修繕費は敷金の範囲を超えてくることは十分に考えられます。

もし大量に水分をこぼしたら、畳をあげて乾かすのが一番ですが、家具があるとそうはいきません。せめてできる限り拭き取り、上に敷物がある場合はかならずはずしておきます。扇風機で風を当てるのも早く乾かすには有効です。

上に置く物の種類に注意

重い家具を置いて畳がへこんでしまうのは仕方がないのですが、畳にシミや汚れをつけたり、カビを発生させるようなものを置いてはいけません。要注意なのが植木鉢です。室内に観葉植物を置きたい場合、畳の上に直接鉢を置くのは厳禁です。

特に素焼きの受け皿は、ちょっと気を抜くと受け皿の形に丸くカビが生えます。また、畳は天然素材ですから鉢植えの土から虫がわく可能性や、水をこぼす可能性があるので、畳の上に鉢植えは置かないようにしてください。

床の間があればいいのですが、今は床の間がある和室も少なくなりました。どうしても畳の上しか置き場がないなら、下に一枚水を通さない板をかませて、完全に鉢全体を覆うような陶器製など防水性の高い鉢カバーを使いましょう。

畳にカーペットはNG

畳の擦り切れや傷みが気になるから畳の上に全面カーペットを敷いて畳を覆ってしまうという人もいますが、これはおすすめできません。なぜなら、畳とカーペットの間に湿気がこもって格好のダニの住処になるからです。

また、覆ってしまっているとその下の畳の様子が見えません。いざ引越しとなった時にカーペットをめくってみるとポツポツとカビが生えていた、なんてことになったら畳を保護するために敷いたカーペットが完全に裏目です。

掃除もしにくくなるので、畳の上には何も敷かないか、敷くとしてもはずして洗ったり干したりできるセンターラグ程度にしておきましょう。

敷金をちゃんと返還してもらうために

自分では敷金は返ってくると思ったのに、畳交換分の敷金が返ってこなくて泣き寝入り、なんていうことにならないようにできることはやりましょう。

借りる前に契約書チェック

借りる前に契約書に「畳交換費用は借主負担」などと書いていないかチェックしましょう。契約書や重要事項説明書は適当に流して捺印してしまうと後で後悔します。

なるべくきれいに使う

日常の損耗ならば敷金から引かれないはずが、子どもがクレヨンで畳を汚してしまった、なんて時には慌てず騒がず歯磨き粉をつけた歯ブラシでやさしくクレヨンの汚れを浮かせるようにして、雑巾で拭き取ります。

これで少しくらいなら消えると思いますが、とれないようなシミをつけてしまった場合は、無駄にシミ消しの努力をするよりも、汚してしまった畳の交換費用だけにしてくれるよう交渉するほうがエネルギーは節約できると思います。

普段からの付き合いを大事に

大家さんも人間ですから、普段きちんと生活している人で、礼儀正しく挨拶もちゃんとしてくれて近所付き合いをしている、なんていう場合と、目が合っても挨拶もしないとか、ゴミの出し方もきちんとしていない、騒音を出すなどトラブルメーカーだった場合では対応が違うことも考えられます。大家さんや管理会社とは普段からいい関係性を築いておきましょう。

もしかしたら現代の若い世代は子供の時から畳の生活をしたことがないという人も多いかもしれません。しかし、畳は日本の風土にあった素晴らしいものです。畳だからと敬遠せず、賃貸候補に入れてみてはどうでしょうか。